サッカー界で一般的に行われているウォームアップは、昔から伝統的に行われているものや、選手任せにしている部分が多い現状がありますが、ゲーム全体、特に前半戦のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすウォームアップは、私自身サッカークラブはもっとこだわって追求していくべきと考えています。

サッカーと違い計測を前提とする陸上競技などでは、普段よりも身体がよく動いたのか?動かなかったのか?が客観的な数値として結果に現れるため、この部分に関しても研究が進み安い傾向にあります。しかし、プレーの良し悪しが個人の主観に委ねられる部分の多いサッカーでは、まだまだ感覚的な領域を出ていません。

今回はこのウォームアップを題材に論じていこうと思います。まずは前提の確認です。


 🔴まずは前提の確認、試合当日のストレッチは数時間にわたって筋力を下げる。スプリント、ストップ、シュート力、全てに悪影響。

まずゲーム前にも一般的に行われている‘‘ストレッチ’’に関してですが、爆発力を必要とする陸上短距離やパワーリフティング当の競技では、大会当日に静的ストレッチを行わずに身体を作っていくことはもはや一般的です。筋繊維を引き延ばし続ける事で、その後数時間にわたって筋肉が発揮できるパワーが低下する事が確認されているからです。

これに関しては様々な場所で研究がありますが、静的なストレッチを入念に行うことで筋出力が6〜8パーセントも低下することがわかっています。この値はスクワット150キロを上げる選手が、10キロ以上も記録が下がるという事を意味します。

また、一般的には静的ストレッチが筋力に悪影響を及ぼすということになっていますが、ストレッチの量によっては動的なストレッチも同様の影響が出ることが、シーズンを通した検証作業で明らかになりました。

つまり、静的ストレッチは筋肉を引き延ばしている時間が長くなるために影響が大きいのであって、ストレッチ時間を長くすれば動的なストレッチでも同じ事態を引き起こすと言うことです。

 

 🔴それでは、どうやって試合当日身体の柔軟性を確保するのか。

ストレッチを避けて全身の柔軟性を確保するために、現代ではランニングやパストレーニングによって筋温を上昇させ、全身の柔軟性を確保していく手法が多く使われています。

筋温が十分に上昇していれば、あとはパス交換やミニゲームを行うだけで十分に全身の柔軟性を確保する事ができる訳ですが、私はサッカー界のウォームアップにまだあまり重要とされていない概念が存在すると考えています。それは、

試合当日の起床時間です。

 🔴人間の身体能力が最も高い時間帯。

人間の身体は、1日の中でも身体能力が変化しています。例えば陸上系の競技では、自己ベストと呼ばれる記録のほとんどは午後、もしくは夜に出ます。

こういった傾向が出る原因は、人間の1日の中で起こる体温の変化にあります。下の図を見てください。図は人の1日の体温変化を表したグラフです。

人は起床後から徐々に体温が上昇し、起床後12時間後に最も体温が高くなります。この時間と試合時間を重ねる事ができれば、選手の身体能力はピークを迎えた状態でゲームを入る事ができます。

そして、この起床から競技開始までの時間は、選手の動きにとてつもないほど大きな影響を及ぼすのです。体感覚もそうですが、実際に数字ベースでもその影響度合いは確認されています。

アメリカの Michael Smolensky 氏等の研究では、午前と午後では

筋力はおおよそ6%、
筋肉の柔軟性は20%、
心肺機能は17%もの違いがあるとされています。

この研究では『午前、午後』という区分をしていますが、要は『起床してから身体能力がピークになるまでには時間がかかる』という事です。

サッカー界にも、面白いデータがあります。

以下の画像は2019年6月8日時点でのJ1リーグチーム別走行距離ランキングです。

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上位の中に13時代のゲームはほとんど見当たりません。そして、1位に近づけば近づくほど夜のゲームばかりになるという傾向がある事がわかります。

このデータを見ると、夜の方が涼しいから昼より走れるだけじゃないの?という見方もできそうですが、そうではありません。

年間の走行距離ランキングを見ればわかりますが、ランキング上位には真冬の13時、14時の試合はほとんどランクインしていないからです。もし気温の問題のみで選手の走行距離が変わるのならば、気温の最も下がる1〜2月の昼間のゲームもランクインしてくるはずです。(ちなみに、走行距離と勝敗の相関関係が無いのは承知していますが、選手が動き回る指標として走行距離を用いています)

ちなみに、私が以前から書いている自身の試合記録と起床時間を照らし合わせた所、記録をつけ始めて以来最高のコンデションを実感したゲームは、起床後12時間後のゲームだった事がわかりました。

私自身の記録では起床後から試合までの時間と、体感した身体の実感は以下の様になっていました。

3時間<<6時間<19時間、24時間<10時間≦12時間

つまり、起床後の試合が短いよりも、起きている時間が長すぎた方が身体はよく動く。最高の時間は起床後9時間〜12時間という結果です。

この自身の研究結果に1日の体温変化を重ね合わせてみると、、、、

驚くほど一致しています。こういった事実からも、起床から試合までの経過時間は選手のパフォーマンスと密接な関係があることが確認できます。私自身が行った実験では、入念にウォームアップをした午前より、適当にアップをした午後の方が身体がよく動くと言うデータも取る事ができました。

ちなみに、サッカークラブで午前の練習と夜の練習のどちらも行なっている場合、双方の選手の動きをビデオに撮って確認すると、驚くほど選手の動きに違いがあることが肉眼ではっきりわかります。

それほど、試合当日の起床時間はアスリートのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすのです。

 

 🔴試合前に『体幹トレーニング』を行うことで、選手の動きに爆発力が生まれる

また、試合前のウォームアップにスクワット、デッドリフトを行うことで、選手のゲーム中における瞬発力を高める事ができます。

一般的に行われているサッカーのウォームアップでは、筋繊維に張り巡らされた神経を100%稼働させることはできません。サッカーで受ける以上の強い負荷を体幹部に与えることによって、より100%近くまで筋肉のパワーを発動させる事ができる様になるのです。

以下の画像は選手の指先にインクをつけ、スクワットとデッドリフトを行なった前後で垂直跳びの記録を測定したものです。

トレーニング前後ではおおよそ3cmの記録差が生まれました。

これは、筋力トレーニングによって各部位の神経が活性化した事と、筋トレ後のパンプアップによって体幹部の圧力が高まり、地面から強い反発を得られる様になった事が要因です。

 

 🔴試合前の筋トレによって持久力は落ちないのか?

また、試合前に筋トレを行うことで持久力が落ちるのでは?という心配もあるかと思いますが、大丈夫です。

基本的に筋肉に損傷を及ぼすことによって筋持久力は低下するものです。筋肉繊維を傷つけないコンセントリック 収縮によるトレーニングを行なった場合、筋持久力は低下しないのです。詳しくは割愛しますが、ウォームアップで行われるスクワット、デッドリフトはコンセントリック 筋収縮をメインとした手法で行います。

こうすることで、全身の筋繊維を損傷させることなく神経を活性化させる事ができるのです。