私はサッカーというゲームにおいて、選手の加速、ストップ、方向転換などのあらゆる意味での‘‘移動する力’’は、ボールを操作する技術よりも重要であると考えています。

そんな移動力を考えるにあたって、これまで述べてきたものとは全く別に、一つ重要な要素があります。それは、

身体についたオモリの位置と量です。


🔴オモリの位置

全く同じ身長、体重、筋肉量、体脂肪率でも、身体のどこが軽く、そしてどこが重くなっているかによって、選手の移動の自由さは大きく変化します。

ざっくり説明すると、ピッチ上を移動する際、力点となる『足』側に重量が集中した方が、スムーズに平行移動を行う事ができると言う事です。

以下の二つの模型のように、身体の上部が重くなれば重くなるほど、急ストップや方向転換が困難になります。逆に、身体の重量が下部に集中するほど急ストップや方向転換がスムーズになります。

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(水平移動を行う際、右の模型の方が安定する)

この模型の原理は、物理的法則に従うものなので、私達の身体にも全く同じ現象が起こります。例えば、ネイマールやロッペンなど、平行移動の爆発力に優れた選手のほとんどは、腹部に比べ胸筋のボリュームが小さく、胸から腹部までがストンと落ちたくびれの少ない比砂時計型の体型をしているのです。

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逆に、腹部の筋肉と比較し、明らかに胸や肩のボリュームが際立っている選手(くびれの際立つ砂時計型の身体)は、加速や方向転換の際、上記の選手たちに比べて、明らかに身体の揺れも大きく加速時に体制を下げるスピードも遅くなってしまいます。

 

🔴想像以上に影響力のある選手の『体脂肪率』

選手の身体についた『オモリ』と言えば、体脂肪率も見逃せない重要な要素です。これは想像以上に私達選手の動きに大きな影響をもたらします。

格闘技界では、この部分はかなり常識的な知見となっていて、体脂肪をつけすぎると、一つ一つの動作が大振りになり動きが膨らんでしまうため、体脂肪をつけすぎた選手は一目でそれが弱点として相手選手に発見されてしまうのです。

考えてみれば当然なのですが、仮に体重70キロの選手の体脂肪率が3パーセント上昇したとしたら、2.1キロの体重増加となります。これは筋肉量の増加では無いので、単純に2.1キロのオモリを纏って試合をしていることになります。

この違いを検証するために、私一人ではありますが実際に脂肪で体重を2キロアップさせ、おおよそ四週間のトレーニングと試合を行なったことがあります。実験では、やはり加速や方向転換に重さを感じ続け、実際に映像ベースでも動作に大きな違いが’確認できました。


(71キロで4週間実験)


(通常69キロ)

そして、何より大きな発見になったのは、体脂肪が多い状態でプレーを続けると、試合だけでなく日頃の練習から大きな負担が身体にかかり、

体脂肪率が低い身体と比べ圧倒的に疲労が蓄積しやすい事が発覚しました。

この原因は単に体脂肪2キロ増のでトレーニングしたことはもちろんですが、実は体脂肪率が上がると筋肉の柔軟性が落ちるという実験データがあります。筋肉の柔軟性が落ちれば運動時にはエキセントリック筋肉収縮が活発に起こるため、さらに身体へのダメージは大きくなります。

この様に複数の要因が重なって、体脂肪が2キロアップしただけでも大きく疲労が蓄積しやすくなった。動作変化を測定するために実験だったのですが、コンディショニングを考える上でも大きな発見を得る事ができました。

また、体脂肪率を通常時に戻した後、同様の実験を今度は重量2キロ程度の衣類を着込で行なったのですが、結果は同じものとなりました。

※この体脂肪の実験はあまりに時間と手間を要するので、私一人での実験しかできませんでしたが、それでも重要な発見であると感じたため掲載させていただきました。