多くのトレーナーは、有名選手の動きを分析し、『骨盤が立っている』とか、『背筋が伸びている』といった解説をよくする。もちろん、一流選手の多くの骨盤は確かにしっかりと立っていて、それにより美しい姿勢を作り出している事は多い。

でも、専門家ならばそんな見ればわかる事を『背筋が伸びていますねー』なんて解説は誰にでもできるわけであって、『なぜそれが起こっているのか』に触れなければ、その美しい姿勢を他者に反映させる事はできない。ほとんどのトレーナーは、『ロナウドはこうなっている』と解説する事はできるが、『どうやったらそれを手に入れられるのか?』を詳しく指導する事ができない。一般的に一番多く聞くアドバイスは、‘‘意識がけ(笑)’’になるわけだ。

一流選手のあの動き、一体そのいくつが‘‘意識がけ’’で手に入るのだろう。これは意識がけを否定しているのではなく、意識がけで手に入るモノと、手に入らないモノはどれなのかをしっかり検証し知っておく必要があるって事。

背筋を伸ばせ!の正体。

たとえば、一流選手の背筋がピンと伸びている原因は、もちろん『骨盤が立っているから』という原因を考える事ができるわけだけど、じゃあ『骨盤を立たせるにはどうすればいいのか?』といえば、即答できる選手は少ないだろう。これでは、必死に骨盤を立てる意識でトレーニングをするのが精一杯で、ゲームになれば忘れて元どおりとなる。プレー中の姿勢は、意識しているだけで変わるほど単純じゃ無い。

大事なのは、意識ではなく勝手にそうなる身体を作る事。例えば骨盤を起こしたいと思うなら、それはハムストリングの柔軟性を高める事で、それはかなり高い確率で達成される。

骨盤を立たせるというのは、骨盤の‘‘後ろ側だけ’’を上に持ち上げるということ。骨盤の後ろ側を持ち上げたいのなら、当然骨盤を抑えている、両腿裏の筋肉に伸びてもらう必要がある。ハムストリングの柔軟性が上がる事で、骨盤は上半身の筋肉に引っ張られ自動的に持ち上がる。

試しに、自分の立ち姿勢を横から撮影し、ハムストリングのストレッチを入念に行った後、写真を比較してほしい。一定時間であるが、確実に背筋の伸び方が変わっているはずだ。これを繰り返す事で、ハムストリングの柔軟性は完全に定着する。

ちなみに、前屈の記録と骨盤の起き具合は密接な関係があるので、今どれほどハムストリングの柔軟性が向上してきたか?それをはかる指標として前屈の記録に注目しておくと良い。

自分事として考えるから、解説できるだけじゃ意味が無い事を痛感する。

日々様々な選手を分析し、自分の体で試行錯誤していると、分析と言うのはいかにWhatに答えるだけでは意味をなさないかを痛感する。重要なのはなぜ起こっているのか?そしてどの様にして起こっているのか?のWhyとHowに答える事だ。

『なぜ、そしてどの様に起こっているのか?』を突き止める事で、初めてトレーニングに落とし込む事ができる。そうでなければ、『君はこうやって動いているが、メッシはこうだよ』と、違いを指摘する事しかできない。それでは選手の未来は何も書き変わらない。

『メッシはこう、ネイマールはこう』そんな情報は、もううんざりする程沢山そこらじゅうにある。でも、俺たち競技者はその先、『どうやったらできるようになるか?』を探し続けなければ自分を進化させることはできない。自分の限界を更新するために、多くのトレーナーの言う『意識しましょう』は、はっきり言ってはなはだ怪しい言葉だと思うべき。と、俺はそう思う。