『キレ』と言われる動作を分解するために、もう一つの指標を導入するのであれば、それは、水平方向への瞬発力になるでしょう。

‘‘ジャンプ力’’はひとまず脇に置いておいて、急ストップ、加速、方向転換、すなわち水平方向における瞬発力が失われると、その選手は周囲から『キレを失った』という印象をもたれやすくなる。そして、この瞬水平方向への瞬発力は、主に『2つ』の機要素によって構成されています。

それは、
足をつく角度と、
地面を蹴る力。
です。

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相手をかわす、抜き去る、対応する、ゲーム中訪れる様々な対人プレーにおいて、必要とされるのは主に水平方向の移動力ばかりです。

そして、この水平方向への移動力は、地面を蹴る際にどれだけ軸足を鋭角に着き、力のベクトルを横向きの成分に変換できるか?が鍵になっているのです。

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(軸足の角度と地面を蹴る力によって水平方向への秋発力が決まる)

『力のベクトルの向き』はサッカー界ではあまり重要視されていない概念ですが、水平方向への爆発力が重要視される競技では一般的な考え方であり、例えば陸上のクラウチングスタートは、ラグビーのスクラムの姿勢などがそれにあたります。

鋭い方向転換を行おうとする際、力点となる軸足はなるべく体幹部分から離れた場所においた方が、水平方向への力は効率よく生み出される。そして、それを体現するために必要なのは、もちろん意識がけではなく(笑)必要とされるのは、股関節の左右前後、全方向への柔軟性です。

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股関節全体の柔軟性が向上すれば、何も意識する事なく、全ての方向転換において少しづつ軸足が外側に出るようになります。(既に実験済み)

水平方向への瞬発力が低下するのは、股関節の柔軟性が低下し、方向転換の際軸足が重心に近づいてくるからで、軸足が重心に近づいてくれば、当然軸足と地面が作る角度は大きくなっていきます。

30代を迎えると、選手の動きに『キレがなくなった』と言われる事が多くなるのは、決して選手のパワーが落ちたというだけではなく(厳密にはあるけれど)自身のパワーを水平方向に変換させる事ができなくなった事が一番の原因です。

その証拠に、垂直方向へのパワーを競うウエイトリフティングなどの競技は、3〜40代であってもバンバン自己新記録を叩き出すことができたりする。サッカー選手にしても、『昔は100キロでデッドリフトできたのになぁ』なんて衰え方はしないものですよね?これは選手である僕らからすれば簡単に確認の取れる事、筋力トレーニングの数値は、30代でもどんどん伸びていきます。

この、水平方向への力の変換が苦手になるという変化は、例えば、現在でも世界トップを維持するクリスティアーノ・ロナウドであっても例外ではありません。

以下の2枚の画像を見てください、この画像は2004年のプレー集の中で、‘‘最も深い角度で軸足をついたシーン’’を切り取ったものです。

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ストップ、方向転換、スタート時の軸足の角度は、45度を下回るほど鋭いものがいくつも発見できます。

でも、2018年のロナウドはどうでしょう?同じ条件でロナウドのドリブル動画を調査すると、、、

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今回も、おおよそ10分間(100近いプレー数)のプレー動画の中、最も深い軸足角度を切り取ったものの、その角度は一度も45度以下に達する事はありませんでした。

レアルマドリード入団以降、ロナウドのプレーは『キレを生かしたウインガータイプ』から、大型センターフォワードタイプに変化しました。このプレースタイルの変化によって、33歳となった現在でもトップパフォーマンスを維持しているものの、動きのキレ(水平方向への瞬発力)という視点から見れば、やはり若い時代のそれと比べ確実に低下している。

ちなみに、若い時代のロナウドに限らず、『キレがやばい』と一般的に言われる選手は、皆とてつもなく深い角度で軸足を地面につける事がでています。現代で言えばネイマールやムバッペなどがその代表。

 

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(ムバッペの軸足角度)

股関節周辺の柔軟性は、若い選手の特権の一つ。そしてその柔軟な股関節が、選手の脚力を水平方向へと変換する。この能力の低下が、前回の記事に引き続き、若々しいキレを失わせる原因の2つ目です。

ちなみに、『若い選手の特権の一つ』とは言ったものの、もちろんこれらはピンポイントに鍛えていく事で修正をかける事ができます。30代くらいの選手であれば、まだまだ『20代のキレ』を取り戻す、または維持する事は十分に可能です。