サッカー界では一般的に『正しいドリブルフォーム』とか、『正しい蹴り方』といったものが存在すると認識されていますが、前回の資料でも書いた様に、実はキックもドリブルも選手それぞれの身体の構造によって最適なスタイルは異なります。

それどころか、身体の構造次第では習得が不可能な技術すら、無数に存在する事が解ってきました。この記事では、生まれ持った身体の構造がサッカーの技術のどの部分に作用するのか、解説していきます。

 

🔴インサイドパスに適した身体の構造

日本サッカーでは入口的な技術とされる『インサイドパス』にも、実は向き不向きと言った身体の構造があります。不向きな構造を持って生まれた場合、いくら訓練を重ねてもゲーム中のインサイドパスの精度は、一定以上なかなか向上しません。

近距離でのパス交換を行う場合はそこまで個人差は表面化しないものの、距離を広げていくとこの違いが徐々に明確になっていきます。

強くパスを蹴るとどうしても横回転がかかってしまうタイプの選手は、完全に『不向き』なタイプとして生まれた選手です。

以前、とあるクラブで「パスのトレーニングや約束事を徹底したものの、一定以上はパスの精度は上がらなかった」という報告を見かけましたが、そもそも

 

選手にはそれぞれ絶対に蹴れない方向や、球質が存在します。

 

不向きな身体を持って産まれた場合、きちんと肉体改造によって身体に修正をかけない限りは、いくらパスのトレーニングを重ねたところでその精度は向上しないのです。

 

🔴インサイドパスの才能、それは股関節の外旋

インサイドキックという技術の質を司る要のは、股関節の外旋運動です。簡単に言うと、まっすぐに立った状態でどれだけつま先を開けるか。という事になります。

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(どれほど足を開けるか)

人間は止まっている時も、走っている時も、基本はつま先は前方を向いていますが、インサイドキックはこの足の向きを外に広げ、内くるぶしを前方に押し出すようにしてボールをミートする。つまり、股関節を外旋させるわけです。

 

この外旋可動域が、身体の向きを変えずにパスを送ることができる限界角度となります。

 

外旋角度以上の方向にパスを出すためには、一度ステップを踏んで身体の向きを変えなければならない。つまり、ワンステップ分の時間が余計にかかるため、ハイプレッシャーの中ではほぼ送球が不可能になるエリアです。

ちなみに、日本人の中では本田圭佑選手や中村憲剛選手がこの外旋運動に優れた股関節を持っています。もちろん、他の選手でもパスを得意としている選手は、例外なくこの外旋動作に優れた股関節を持っています。

彼らは皆、内くるぶしを完全に前方に向けたまま足を前に振ることができる。

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インサイドパスの技術を向上させようとするとき、多くの選手がボールを使ったパスのトレーニングを行うでしょう。しかし、パス練習する前に写真の彼らの様なフォームを真似できるだろうか?という事を最初に確認し、綺麗にくるぶしを前に向けられないのなら、まずはそこを改善しなければなりません。

ちなみに、最初に例として出した写真はメッシ選手のものです。

彼が細かなパスを交換しながらエリア内に侵入する時、全くスピードが落ちないのは身体の向きを変えずとも様々な方向へパスを送ることができるから。走りのフォームを全く崩さずに様々な方向へ足を向けることができる、規格外の股関節を持っています。

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(リオネルメッシの異常とも言える外旋角度)


🔴ドリブルにも存在する身体の才能

パスだけでなく、向き不向きの構造は全ての技術に存在します。次はドリブルを見て見ましょう。

例えばサイドでのドリブルを考える上で、主なパターンは『縦と中』への2択になるわけですが、このうちの『縦』は、『中(カットイン)』と比べ生まれつきの身体の構造次第で向き不向きが大きく分かれます。

身体に『縦突破に適したある構造』が備わっていれば、縦への突破はとても楽になります。逆 にこの構造が備わっていなければ、相当な工夫を凝らさない限り『縦をぶち抜く』といったプレーは難しくなる。

 

その構造とは
踵に重心があるかどうか。
です。

 

人には踵、つま先の二つの重心タイプがあります。(以下『かかとタイプ』『つま先 タイプ』)これまで行ってきた統計では、かかととつま先タイプの割合はおおよそ半分半 分程度です。にも関わらず、世界で活躍する高速ドリブラー達は全員と言っても過言ではないほど、アザール、クリスティアーノ、メッシ、クアレスマ、ロナウド、マラドーナ、デ ニウソン、ドグラスコスタ、ロビーニョ皆揃ってかかとタ イプの選手ばかりという現実があります。

なぜ、高速ドリブラーはかかとタイプばかりなのか、それは

かかとに重心があると、ボールを扱う位置が足元の深い位置になるためです。

ボールが深い位置にあれば、DFがその分近くに寄ってくるため裏をつきやすく、さらにはかかとタイプの選手しか実現が困難な特殊フォームでのドリブルが可能となります。このフォームのドリブルは他のフォームのド リブルと比べ圧倒的にスピードが出ます。

それが、以下の画像にあるドリブルフォームです。


(ボールを顔の真下に置くかかとタイプ特有フォーム)

 

🔴ボールをタッチする位置

高速の直線ドリブルを発動しようとするとき、かかとタイプの選手は懐の深い位置でボー ルを押し出すことができますが、つま先タイプの選手にはそれが困難です。

このため、かかとタイプの選手の方がより『走り』と近いフォームでのドリブルが可能とな ります。このタッチの違いを表したのが、以下の画像です。


(深い位置でタッチすると)


(身体の真下に足をつける)


(走りのフォームと同じ) 


つま先タイプの選手はかかとタイプと比べ、顔の位置が前方にあるため足元の深い位置までボールが入り込むとボールが見えなくなってしまいます。そして、重心に対してボール を扱う位置が深過ぎて、つまづいてしまう。

このため、つま先タイプの選手はボールをタッチする位置がどうしても前に出てきます。

ボールをタッチする位置が前方に来ると、『走り』を考える上で理想的な位置に足をつくことができなくなり、地面に足をついた瞬間に減速してしまうのです。

こういった理由から、つま先タイプの選手はかかとタイプの選手と比べ、ドリブル全般の推進力が劣ってしまうという現実があります。

 

🔴つま先タイプのドリブル

つま先タイプの選手がドリブラーを目指す場合、参考にすべきはつま先タイプの選手のドリブルです。例えばアンドレス・イニエスタや、若い時の中村俊輔選手の様な『方向転換で抜き去っていくタイプ』を目指すと非常に効率が良くなります。

重要なのは、方向転換で抜き去ることを前提とする事。

つま先タイプのドリブラーの代表として、ルイス・スアレス選手がいますが、彼ほどの選手でも、直線的なドリブルで相手を交わせるシーンは殆どありません。動画を見れば、多くの場合で直線的な突破ではなく、方向転換によって抜き去っていることがわかります。

スアレスのドリブル動画

つま先タイプの選手は、どのプレーも膝が前に出る傾向が強く、そのため足首の沈みが非常に良いです。足首が深く沈むということは、鋭い方向転換が可能ということでもあります。そのため、訓練次第でかかとタイプの選手には決して真似することができない鋭い切り返しを習得することができます。

 

習得できるプレーとできないプレーを理解し選手のトレーニングプランを作る。

 

この様に、私達の身体には生まれながらに向いている動作、向いていない動作というものが存在します。チームに所属する選手がどの様な課題を持ってトレーニングに臨にせよ、あらかじめこの事を理解してトレーニング計画を作るのとそうでないのでは、同じ努力量に対しても出てくる結果が全く異なってくるのです。

選手の身体の構造を理解して、その構造に合った訓練を行う事。

クラブに所属する選手自身もその事を理解しサッカーに取り組んでいく事で、飛躍的に選手の能力を伸ばしていくことができる様になるのです。