『縦への突破』には明確な才能が存在する。

サイドでのドリブルを考える上で、主なパターンは『縦と中』への2択になるわけですが、このうちの『縦』は、『中(カットイン)』と比べ生まれつきの身体の構造次第で向き不向きが大きく分かれます。

身体に『縦に適したある構造』が備わっていれば、縦への突破はとても楽になります。逆 にこの構造が備わっていなければ、相当な工夫を凝らさない限り『縦をぶち抜く』といっ たプレーは難しくなる。

 

その構造とは
カカトに重心があるかどうか。
です。

 

人にはカカト、つま先の二つの重心タイプがあります。(以下『かかとタイプ』『つま先 タイプ』)これまで行ってきた統計では、かかととつま先タイプの割合はおおよそ半分半 分程度です。にも関わらず、世界で活躍する高速ドリブラー達は全員と言っても過言では ないほど、アザール、クリスティアーノ、メッシ、クアレスマ、ロナウド、マラドーナ、デ ニウソン、ドグラスコスタ、ロビーニョあいつもコイツもそいつも皆んな揃ってかかとタ イプの選手ばかりです。

なぜ、高速ドリブラーはかかとタイプばかりなのかというと、

かかとに重心があると、ボールを扱う位置が足元の深い位置になるためです。

ボールが深い位置にあれば、DFがその分近くに寄ってくるため裏をつきやすく、さらに はかかとタイプの選手しか実現が困難な特殊フォームでのドリブルが可能となります。僕 が『カカト重心ドリブル』と呼んでいるのがこのドリブルフォームで、どのフォームのド リブルよりも圧倒的にスピードが出ます。あまりにもスピードが出すぎるので、フットサ ルで発動されることはほとんどなく、サッカーの直線的な高速ドリブルでしか発動されな いフォームと言えます。

それが、以下の画像の内一番右にあるドリブルフォームです。

低速

中速

高速(かかとタイプ特有)

上の画像は左側から順にスピードが早くなり、一番右が最速となります。そして、一番右 側のフォームはかかとタイプの選手にしか発動することが困難な、特殊なドリブル方なのです。

その理由については次に書きますが、高速ドリブラーの動画を観察すると、サイドを直線的にブチ抜くようなシーンでは決まってこのフォームが登場していることがわかります。

参考動画

ちなみに、日本人では原口元気選手がかかとタイプの代表格です。

 

【ボールをタッチする位置】

高速の直線ドリブルを発動しようとするとき、かかとタイプの選手は懐の深い位置でボー ルを押し出すことができますが、つま先タイプの選手にはそれが困難です。

このため、かかとタイプの選手の方がより『走り』と近いフォームのドリブルが可能とな ります。このタッチの違いを表したのが、以下の画像です。

(深い位置でタッチすると)

(身体の真下に足をつける)

(走りのフォームと同じ) 


つま先タイプの選手はかかとタイプと比べ、顔の位置が前方にあるため足元の深い位置ま でボールが入り込むとボールが見えなくなってしまいます。そして、重心に対してボール を扱う位置が深過ぎて、つまづいてしまう。

このため、つま先タイプの選手はボールをタッチする位置がどうしても前に出てきます。

ボールをタッチする位置が前方に来ると、『走り』を考える上で理想的な位置に足をつくことができなくなり、地面に足をついた瞬間に減速します。

こういった理由から、つま先タイプの選手はかかとタイプの選手と比べ、ドリブル全般の推進力が劣ってしまうという現実があります。

 

【つま先タイプのドリブル】

つま先タイプの選手がドリブラーを目指す場合、参考にすべきはつま先タイプの選手のド リブルです。例えばアンドレス・イニエスタや、若い時の中村俊輔選手の様な『方向転換 で抜き去っていくタイプ』を目指すと非常に効率が良くなります。

重要なのは、方向転換で抜き去ることを前提とする事。

つま先タイプのドリブラーの代表として、ルイス・スアレス選手がいますが、彼ほどの選手でも、直線的なドリブルで相手を交わせるシーンは殆どありません。動画を見れば、多くの場合で直線的な突破ではなく、方向転換によって抜き去っていることがわかります。

スアレスのドリブル動画

つま先タイプの選手は、どのプレーも膝が前に出る傾向が強く、そのため足首の沈みが非常に良いです。足首が深く沈むということは、鋭い方向転換が可能ということでもあり ます。そのため、訓練次第でかかとタイプの選手には決して真似することができない鋭い切り返しを習得することができます。